有名な
シヨン城には、行きはモントルーから遊覧船に乗って行った。船は湖上をすべるように進み、やがて、様々な映像で目にしていたとおり、レマン湖に浮いているかのように見える美しい城が近づいてきた。
城は湖岸に建っていて、岸辺から門をくぐり中に入ると、それまで抱いていたロマンティックなイメージは吹き飛んでしまった。バイロンが「シヨンの囚人」という詩を残しているように、
シヨン城はかつて幽閉の地であった。優雅な趣はなく、無骨な荒々しさが漂っていた。
帰りは、モントルーまで湖岸沿いの遊歩道を歩いた。樹々が心地良い緑陰を作り、湖の向こうにそびえるフランスアルプスや美しく咲きそろう花々が目を楽しませてくれた。ゆったり犬の散歩をする人や、気持良さそうにジョギングをしている人。私もここでなら疲れを知らず、どこまでも走ってゆけそうな気がした。

レマン湖に浮いているように見える
シヨン城






どこまでも歩いて行きたくなる心地良い遊歩道

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中世の家並みが残る
ペルージュ(
Perouges)には、リヨンからバスで行った。
バスを降りて長い坂道を上って、「こんな不便な田舎の村へ、わざわざ遠い日本からやって来るわ」と半ば自嘲気味に心でつぶやいて、村の小さな門を入った。そんな投げやりな気持ちになっていたのは、旅の終わりが近づき疲労が蓄積し、足の指が痛かったせいだ。だが、フランスの美しい村は決して期待を裏切ることはない。朝早く着いたため、人もまばらで静寂に包まれた村は一際美しく、疲れた旅人を優しく迎えてくれた。
細い路地を歩いてシャッターを切っていると、この村の名物であるガレットの職人たちが、工房から出てきて表情豊かに様々なポーズをとってくれた。それはまるで寸劇を見ているかのようであった。突然の出来事に、私はシャッターを切ることも忘れて見入ってしまった。フランスでは時々こんなお茶目な人々に出会う。とっさに反応できず、いつもシャッターを切り損ねてしまうのだ。見とれている私を残して、彼らは工房に戻り、また忙しく働き始めた。路地には何事も無かったかのように静けさだけがあった。
ペルージュ(
Perouges)の入口、小さな門を見上げる









村の教会にて
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「綿の城」を意味する
パムッカレ(
Pamukkale)。自然は時として、人間の想像を遥かに超えた芸術作品を創り出す。高さ200mから連なる白い石灰棚、煌くアイスブルーの水面、遠く広がるアナトリアの大地。壮大な景観を眺めながら、裸足で歩いて、直接綿の城の感触を楽しむ。
パムッカレは、トルコに行ったらやはり一度は訪れておきたい美しい城だ。






かつてローマ帝国の温泉保養地であった
ヒエラポリス(
Hierapolis)の遺跡は、
パムッカレを少し上がった所にある。
ヒエラポリスと
パムッカレは、自然と文化の複合遺産として世界遺産に登録されている。



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ポルトガルの素朴な猟師町
ナザレ(
Nazare)での記憶は、犬だ。リスボンからエクスカージョンで訪れて、自由時間に路地を歩いていると、途轍もなく大きな野犬が何匹もうろついていた。以前家で、真っ黒なシェパードを飼っていたが、もともと犬は得意な方ではない。べつに噛まれた経験があるわけではないが、小さな飼い犬でさえ、見知らぬ犬は少し怖い。大きな野犬は、なおさら怖い。海岸に戻って、時間まで海を眺めて過ごすことにした。ここにも犬がいた。燦燦と照りつける太陽の下、白い砂浜、真っ黒な犬。光と影の強いコントラスト。それは、いつかどこかで見た風景に似ていた。

大きな野犬に阻まれて、丘の上には行けなかった





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「谷間の真珠」と呼ばれる
オビドス(
Obidos)は、城壁に囲まれた美しい村だ。アズレージョに覆われた門を抜けると、白壁が眩しく可愛らしい家並みが続く。かつて、その美しさにすっかり魅了された王妃イザベルに、ディニス王が村をまるごとプレゼントしたと言う。
私は、リスボンから日帰りのエクスカージョンで訪れた。村には15世紀の城をホテルにしたポザーダ(Pousada do Castelo)がある。全9室しか無く、ポザーダの中でも特に人気が高いそうだ。今度行く時は、ぜひポザーダに泊まってゆっくり村に滞在してみたい。未だ見ぬ地にも行ってみたいが、やり残したという思いがある地には再訪したくなってしまう。一度の訪問で悔いが残らないように、納得の行く旅ができるようになりたいものだ。

城壁から
オビドスを眺める


アズレージョが美しい門、ポルタ・ダ・ヴィラ(Porta da Vila)







サンタ・マリア教会(Igreja de Santa Maria)
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リスボンに美しいイタリア式庭園がある。それは、初代フロンテイラ侯爵が1670年に狩猟の館として建てたという
マルケゼス・デ・フロンテイラ宮殿(Palacio dos Marquesses de Fronteira)の庭園である。アズレージョに彩られたテラスには神話をモチーフにした彫像が並んでいる。訪れた時は、ひっそり静まり返っていて、庭園の美しさをしみじみ味わうことができた。ポルトガルでは、魅力的な庭園に期せずして出会う。シントラのレガレイラ宮殿もそうだった。ガイドブックで観光地としての評価が低くても、素晴らしいところが沢山ある。きっと記載さえされていない素敵なところも沢山あるに違いない。それらに運よく出会えた時、人や物との出会いと同じように、何かに導かれて出会えたように感じる。そんな風景との出会いが、さらなる旅へと誘うのだ。

今も侯爵の子孫が住んでいるという
マルケゼス・デ・フロンテイラ宮殿





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イスタンブールにある
ドルマバフチェ宮殿(Dolmabahce sarayi)は、オスマン帝国の時代にはスルタンの居城として、またトルコ共和国になってからは大統領官邸として、歴史にその華々しい姿が刻まれている。
その豪華絢爛な宮殿で特に目を見張ったのは、大階段の手摺の支柱にクリスタルが使用されていること。中央に吊るされたバカラの巨大なシャンデリアも美しいが、それよりも手摺の美しさに心を奪われてしまった。
ドルマバフチェ宮殿と聞いて、私が真っ先に思い出すのは、このクリスタルの手摺である。




大階段の手摺の支柱がクリスタル




宮殿からボスポラス海峡を望む
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イスタンブールにある
地下宮殿(
イエレバタン・サライYerebatan Sarayi)の正体は、東ローマ帝国のユスティニアヌス帝により建設された大貯水槽であった。以前知人に見せてもらったメデューサの首の写真と、
地下宮殿という謎めいた響きに魅かれ、トルコ旅行で最も楽しみにしていた場所である。
実際に訪れてみると、何故か逆さまになったメデューサの首が幻想的な雰囲気を盛り上げてはくれるが、期待していた程ではなかった。現代アートの不自然な演出がされていて、せっかくのいい雰囲気に水をさしていた。京都の高台寺でも同じような経験をした。演出によっては、返って美しさを損ねてしまうと感じる。ナンシーのスタニスラス広場の光のショーのように美しさをより高めてくれる演出もあるけれど・・・。

336本の大理石柱が支える
地下宮殿


何故か逆さや横になったメデューサの首



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フィガロの特集で
ボドルム(
Bodrum)の写真を見て、いつか絶対に行こうと決めていた。その白く美しい町は、トルコの海辺のリゾートである。日本から出ているトルコのツアーを色々調べて、やっと見つけた
ボドルムを訪れるツアーでは、トルコを代表する古代遺跡のあるエフェソスが削られていた。それでも良いと思った。とにかく、真っ青な海と白い町が見たかった。
ツアーで泊まったホテルは町から少し離れた高台にあり、自由時間も無く、せっかくの白い町を散歩することは出来なかった。これにはがっかりしたが、青く美しい海は充分に堪能することができた。小さな船を貸切にしてクルーズし、1日海の上でゆっくり過ごすことができたのだ。サファイアブルーやエメラルドグリーンに輝く海は、いくら眺めても見飽きることはなかった。愉快な船長が昼食を作ってくれて、船上でランチをした。何を食べたか全く憶えていないが、何だか美味しくて楽しかったことは憶えている。







信じられないくらい美しい海の色
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ナンシー派美術館(Musee de l'Ecole de
Nancy)は、
ナンシー派(アール・ヌーヴォーの1派)のパトロンであったコルバン氏の邸宅を美術館として公開している。
エミール・ガレや
ルイ・マジョレルなどの貴重なコレクションが、室内装飾として自然な形で展示されている。
日常から隔絶した空気の漂うセピア色の室内に入ると、当時のコルバン邸に招かれた客人のような気分になってくる。遥かな時を超えて、アール・ヌーヴォーの夢見るような世界にまどろむ。できれば、いつまでもずっと、その空気感に包まれていたかった。
短くも美しく燃えた芸術の華、アール・ヌーヴォー。その生きた証である
ナンシー派美術館は、現代の人々につかの間の美しい夢を見せてくれる。

扉の向こうは夢のように美しいアール・ヌーヴォーの世界(残念ながら室内は撮影禁止だった)





当時は小さな水族館として使われていたパビリオン

ルイ・マジョレルの邸宅(Villa Majorelle)、見学は
ナンシー派美術館に要予約
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エミール・ガレの生地である
ナンシー(
Nancy)には、
アール・ヌーヴォーの建築が数多く残っている。美しくそれぞれが個性的な姿は、春に咲き誇る花々のように魅惑的だ。蔓のように伸びたアイアン飾りや、花弁を模ったレリーフなど、ひとつひとつ凝った意匠を眺めながら散歩するのも楽しい。ほとんどが個人住宅であるため、室内を見学することができないのが残念である。
ブラッスリー・エクセルシオール・フロ(Brasserie Excelsior Flo)では、美しい
アール・ヌーヴォーの装飾の中で食事をすることができる。私は、滞在中に2度ランチをした。店には客がひっきりなしに訪れていて、常に賑わっていた。スタッフの中に小柄で華奢な女性がいた。見ているこちらが心配になる程、大量の食器を載せたひどく重そうなトレイを担いでいた。担ぎ上げる時、一瞬まわりの男性スタッフも気にしたようだが、手を貸そうとはしなかった。フランスでは、重い荷物(と言っても機内持ち込み可能な小さなキャリーバッグだが)を持っていると通りすがりの男性が手を貸してくれることが多い。習慣として根付いているように感じる。が、ひとたび仕事となると、事情が違うようだ。そこにあるのは、徹底した男女平等なのだろう。旅人には解らない、この国で生きていくことの厳しさを垣間見た気がした。

世界遺産に登録されている
スタニスラス広場(Porte Stanislas)を見下ろす





町に息づく
アール・ヌーヴォーの建築

ブラッスリー・エクセルシオール・フロ(Brasserie Excelsior Flo)の内装
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世界遺産に登録されているスタニスラス広場に建つ
グランド・ホテル・ド・ラ・レーヌ(Grand Hotel de la Reine)は、かつてマリー・アントワネットも泊まったことがあるという由緒正しい建造物である。
ホテルの階段ホールには優雅な装飾が施されているが、私の泊まった部屋は予想外に落ち着いたインテリアで、華やかさは無かった。きっと部屋によってまちまちなのだろう。このホテルに泊まる醍醐味は、世界遺産の中で過ごすことができることだ。それだけで、とても気分が良い。それは、昼間歩き疲れてホテルへ立ち寄る時も、夜暗くなってから安心してライトアップされた広場を散策する時にも感じることだ。欲を言えば、自由に使える美しいサロンやライブラリールームなどがあると、さらに快適な滞在ができると思うのだが・・・。

左の建物が
グランド・ホテル・ド・ラ・レーヌ
優雅な装飾が施された階段ホール




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