10月の日暮れは早く、既に真っ暗で駅周辺にタクシーの姿はない。書き留めていたホテルの電話もなぜか通じない。しかも、ここは南イタリア。あせりと心細さに判断力が鈍る。何とかしなくては!
近くのタッバキに入りそこにいた人々に尋ねる。皆ほとんど英語は通じない。
だが、人間いざとなると身振り手振りと動物的な勘で何とか少し通じ合える。ホテルまでは歩いて10分位で、この町にタクシーは1台も無いとのこと。詳しい道順は全く理解できない。
年輩の迫力ある女性が「彼の車に乗せて行ってもらいなさい。」と何度も言う。見ると感じの良い男性だが、タクシーの運転手でもない通りすがりの人に乗せて行ってもらうわけにはいかない。ここは旅のポリシーとして断る。
困っていると、小柄な可愛らしいおじいさんがホテルまで歩いて一緒に行ってくれると言う。そこには打算も下心も全く無い。歩きながら、懸命に「あなたに会えてうれしい」、「あたなはとても優しいジェントルマンだ」などと言い、何とか感謝の気持を伝える。「ジェントルマン」の言葉ににっこり微笑んでくれた。ホテルに到着し、改めてお礼を言うと、「遠く日本から、この町に来てくれただけで嬉しい。」と言ってくれた。
心にほっと穏かなものが溢れた。
翌日は海辺のリゾートにふさわしく、快晴であった。
美しく輝くポリニャーノの海を眺めながら、ゆっくり朝食を楽しむ。
ハート型模様のカプチーノに熱々パリパリのクロワッサン。
食後は、意を決して旧市街に入り、夢中になってシャッターを切る。どんなに切っても、決して捉え切れない白い迷宮。時々、忽然と現れる海辺に開けたテラス、岸壁に張り付く様に建つ家々、フランスのそれに比べ、無骨だが味わい深い町並み。どんなに歩き回っても疲れず、見飽きることのない風景。
ホテルに戻ると、あらゆるテラスに出て眺め入る。
海の上を走る、船を思わせる屋上テラスは貸切状態で、そこからの極上の眺めはポリニャーノを独り占めしている気分にさせる。
いつか必ず、この風景に会いに戻って来よう。
強く心に誓った。








ホテルテラスからの眺め

ホテル屋上テラスからの眺め

ホテルCOVO DER SARASENIの外観

ホテルのラウンジ

ホテルの部屋
ようやくたどり着いたホテルCOVO DER SARASENIは、有名な洞窟レストラン(グロッタ・パラッツェーゼ)を持つホテルと並ぶ4★ホテルである。10月は洞窟レストランがお休みのため、インテリアの好みでこちらを選んだのだが、とても居心地の良いホテルであった。
プーリア・バジリカータ州の旅行には、「南イタリアプーリアへの旅」(木下やよい著 小学館)がとても役に立ちました。
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